東亜成型株式会社 〜工場ブランディングへの道のり〜

先週、11/28・29の2日間、マイドーム大阪ビジネスフェスタへ行ってきました。今回は、メビック扇町様のブース内にて、中小企業のクリエイティブ活用事例として弊社の取り組みを紹介して頂きました。
製造メーカーがメインとなっているイベントですが、数ある企業の中で「デザイン」という言葉を打出しているいる企業様が結構あったのには、少し驚きでした。やはり、時代の流れがそうなっているのでしょうか。


今回紹介して頂いたのは、大阪市西淀川区中島にある
東亜成型(株)さんとの取り組みについて。

全ての始まりは、会社案内を依頼された事がきっかけでした。
創業60年になるアルミ鋳造の会社の三代目として家業を継ぐため、3年前に入社された営業担当の浦竹氏。
はりきって営業活動をしようと、社長に会社案内はないかと訪ねたところ、出てきたのは30年ほど前に作られたままのモノクロの会社案内だったそうです。
狭い業界の中で、長年の実積と信頼から、新規顧客獲得の為の営業ツールなど必要なかったのでしょう。しかし、後継者として時代の流れや将来的な展望を見越し、営業ツールが必要だと考えた浦竹氏は自社の宣伝方法として、まず会社案内を作る事を考えました。


<浦竹氏からの要望 1> 製造業の暗〜いイメージを変えたい!
昔から一般的に根付いてしまったイメージ、3K。きつい、汚い、危険。
おかげで、若い人材を確保できず、職人さんが育たない。
新しい流れを作って行くためには、イメージを変え「こんな会社で働きたい!」
「職人ってカッコイイ!」と思わせる会社になりたい。



<浦竹氏からの要望 2> 誰が見てもわかる技術説明
まったく畑違いの業界から転職した浦竹氏。そのため自社の技術をうまく説明できずにいました。これまで、業界だけでの受注生産をしていましたが、これからは新たな分野へ挑戦したい。そのためには、まずは「鋳造」というものを知ってもらい、可能性を広げていきたい!




浦竹氏と何度も会話を重ねていくうちに、彼のアツイ情熱に心動かされた私達は
いかにして、東亜成型を「魅せる」か、イメージの戦略にワクワクしていました。こうして東亜成型株式会社の工場ブランディングが始まったのです。


そうして、依頼を受けてから何度もヒアリングを進めていくうち、
製造業ならではの課題に気がついたんです。

・最終商品ではないので、「製品」をアピールできない。
・製品の裏には、すばらしい技術と生産力がある。自社のウリはその技術力だが、そのアピールの方法がわからない。


そして、私達が考えたのは・・・・

では、職人さんをもっとアピールしましょうよ!
「技術=職人さん」東亜成型の製品は、職人さんの目、力、感覚で成り立っている。だったら、主役は製品でも設備でもなく、職人さんではないですか!

という事で、「職人さんを魅せる!」これをコンセプトとし、様々な取り組みを始めました。



●まずはキャッチコピー
「型破りな考えを型にはめる」
一般には馴染みのない特殊な業種なので、言葉でまずインパクトを。技術で他業種への可能性を見いだすため、業界だけでなく一般の方にも受け入れてもらいたいという思いがあり、コピーを作りました。このコピーは名刺や会社案内、動画などあらゆる場面で常に使用しています。



●職人さんもオシャレに!
「作業着は汚いだけじゃない、オシャレに着る。」
職人さんが家からそのまま着てこれるような、外でも着れるT シャツをデザイン。大抵、機能性を重視した地味な製造業の観点からかけ離れた「ファッション性」を重視しました。来客時の印象や、若い人からの印象が変わりました。


●誰でもわかる!工程説明
「看板営業マンをキャラクター化」
専門業者以外の分野にもアルミ鋳造を知ってもらうため、PR 動画を制作。工場の作業風景の他、まったくの素人でもわかるよう、言葉では説明しづらい作業工程を誰が見ても分かる様にアニメーションで表現。看板営業マンをキャラクター化する事で、明るく楽しげな雰囲気を出しました。このおかげで、「一体どんな会社?」と興味を持ってもらい、なんと新規顧客ゲット!


●会社案内は、「資料」ではなく、「見せる媒体」に。
題して、忘れられない会社案内!東亜成型の売り「技術=人・職人」にクローズアップし、会社案内という「資料」ではない、「見せる媒体」としての会社案内を制作しました。折りたたみ式になっており、広げるとなんとポスターに!
ちなみにモデルはナイジェリア出身、金型加工担当のイケンナさん。豪快な見た目とは反対にピュアな心の持ち主。現場のムードメーカーです。
裏面には、働く男達の凛々しい表情が!
やっぱり、男性の真剣な表情ってカッコイイわ〜♥



これらの取り組みを行ったことで、こんな変化が見られたんです。

・自社を表現する過程で、職人さんのモチベーションが変わった!
常日頃、影の存在だったのが、自分もしくは自分の会社をPR する事により、誇りと自信を再確認。家族にも自分の会社を自慢げに話す事ができ、仕事にハリが出てきました!



・社内のコミュニケーションが増えた!
意見交換、それに伴い仕事以外の共同作業をする事で、個々の距離が近くなりました。また、普段は口数が少ない人でも、意見を発表する場が設けられた事で、自分のアイデアが採用されたり、共感しあうなど、職人さん同士の交流が深まりました。



・作業効率が上がった!
職人さんの意識改革があった事で、お互いに認め合い、協力しあい、結果的に作業効率があがりました。



・新規の問い合せが増えた!
ユニークな発想とアイデアを発信していく事で、周囲に興味を与える事ができました。また、HP に掲載した動画は反響が多く、問い合せも増え、新規取引が決まりました。




という事で、これまで新しい取り組みを行ってきたわけですが、私達デザイナーにとっても大変やりがいを感じています。それは、自分たちの手によって企業様にどんどん良い変化が見られる事。そして、それによりお客様の喜びの声を聞ける事。それだけでなく、対外的にも評価を頂けた事。これこそが、私達にとって最大の成果なんです。
まだまだ挑戦は始まったばかり。
デザインで変革するのは、会社だけではない。人も経済も世の中も変わる。
表面的な見た目の提案だけでなく、ムーブメントを巻き起こす。
私達デザイナーが果たすべきミッションは、わんさかあるんです。
未来へ向けて、楽しみがいっぱいです!